1. 「どんな患者に来てほしいですか?」と聞かれたら
「どんな患者さんに来てほしいですか?」
そう聞かれたら、何と答えるでしょうか。
「来てくださる患者さんなら、どなたでも」
地域の幅広い患者さんを診ている医院にとって、年齢や性別で対象を限定する必要は感じにくいかもしれません。保険診療を中心にしている場合は、なおさら「特定の層だけに来てほしいわけではない」と考えるのも自然です。
一方、広告や集患の提案では、「30代女性をターゲットにしましょう」という話を耳にすることがあります。
30代女性という患者像は、審美治療、予防歯科、子どもの歯科受診など、複数のテーマを考える際の出発点になります。SNSやインターネットで情報を届ける施策とも組み合わせて検討できます。
そのため、30代女性にアプローチすること自体が間違っているわけではありません。医院の診療内容や地域の状況によっては、十分に検討できる方向性です。
ただし、そこでターゲット設定を終えてしまってよいのでしょうか。
「30代女性」は、患者像を考える入口です。その人に何を伝えるかを決めるには、もう一歩踏み込む必要があります。
2. 同じ「30代女性」でも、歯科医院に求めるものは違う
同じ30代女性でも、歯科医院に来る理由は人によって異なります。
例えば、次のようなきっかけが考えられます。
- 歯が痛くなり、早く診てもらいたい
- 歯の色や見た目が気になっている
- 気になる症状はないが、定期的に検診を受けたい
- 子どもを診てもらえる医院を探している
- 引っ越しをして、通える歯科医院を探している
この人たちに、同じ内容を伝えても、同じように関心を持ってもらえるとは限りません。
歯が痛い人は、予約の取りやすさや診療時間を先に確認したいかもしれません。見た目が気になる人は、治療の選択肢や費用、相談の流れを知りたいでしょう。
子どもの受診先を探している人なら、院内の雰囲気や子どもへの対応が判断材料になることもあります。
年齢と性別が同じでも、来院のきっかけが違えば、必要な情報も変わります。
ターゲットを考えるときは、「何歳の誰か」に加えて、「どのような状況で歯科医院を探している人か」まで想像してみることが大切です。
3. ターゲットを考えるときに整理したい4つのこと
患者像を具体的にするために、次の4つを整理してみましょう。
何に悩んでいるか
まずは、歯科医院を探すきっかけになる悩みです。
痛み、見た目、歯ぐきの状態、子どもの歯など、何が気になっているのでしょうか。
「審美治療に興味がある人」から一歩進めて、「写真を撮るときに歯の色が気になる人」と考えると、届けたい情報が具体的になります。
どうなりたいか
悩みの先に、どのような希望があるのかも考えます。
痛みを落ち着かせたい、口元を気にせず笑いたい、歯の状態を確認して安心したい。患者さんが求めることを、治療名だけで表さないようにするのがポイントです。
何が不安か
受診したい気持ちがあっても、不安があると予約をためらうことがあります。
費用はいくらかかるのか。痛みはあるのか。何回通うのか。相談だけでもよいのか。
患者さんが判断するために必要な説明が、HPやSNSにあるかを確認してみましょう。
どんな条件なら通えるか
診療内容に関心を持っても、生活の中で通えなければ来院にはつながりません。
仕事帰りに通える時間、休日の診療、駅からの距離、駐車場の有無など、通院条件も患者像の一部です。
例えば「仕事が忙しい人」と「子どもを連れて通いたい人」では、確認したい条件が異なることもあります。
この4つを整理すると、「30代女性」という大きなくくりから、実際の生活が想像できる患者像に近づきます。
4. 患者像が変わると、伝える内容も変わる
患者像を具体的にする目的は、HPやSNSで伝える内容を決めやすくすることです。
例えば、同じ医院でも、次のように情報の優先順位が変わります。
| 想定する患者さん | 優先して届けたい情報 |
|---|---|
| 痛みがあり、受診先を探している人 | 診療時間、予約方法、急な症状がある場合の連絡方法 |
| 歯の見た目について相談したい人 | 治療の選択肢、費用、期間、リスク、相談の流れ |
| 子どもの受診先を探している人 | 子どもの診療方針、院内の様子、保護者への案内 |
| 定期的に通う医院を探している人 | 検診の内容、通院の流れ、アクセス、予約方法 |
重要なのは、医院の情報を変えることではありません。患者さんが知りたい情報を、見つけやすい順番で届けることです。
例えば、子どもの受診先を探している人に向けた投稿なら、最初に子どもの診療について説明し、その先で予約方法を案内する。
このように、誰に向けた発信なのかが明確になると、文章、写真、リンク先も選びやすくなります。
5. ターゲットを絞ることは、ほかの患者を断ることではない
「ターゲットを絞る」と聞くと、ほかの患者さんが来にくくなるのではないかと感じるかもしれません。
しかし、診療の対象と、一つの発信で主に呼びかける相手は分けて考えられます。
幅広い患者さんを診る医院でも、ある投稿では子どもの受診について伝え、別の投稿では仕事帰りの通院について案内できます。
一つの投稿に、すべての年齢、すべての悩み、すべての診療内容を盛り込もうとすると、内容が散らばってしまいます。
医院全体では幅広い情報を用意しながら、個々の投稿や広告では相手を具体的にする。その考え方であれば、医院の診療方針とも両立しやすいのではないでしょうか。
6. 私が、ターゲット設定で大切にしたいこと
私は、「30代女性をターゲットにする」という方針には、意味があると思っています。
ただ、その言葉だけで、発信の内容まで決まったように扱うことには疑問があります。
「30代女性に向けて、何を伝えるのか」
ここまで考えて、初めて文章や写真を選べるようになるからです。
歯の見た目を気にしている人と、子どもの受診先を探している人。同じ30代女性でも、知りたいことは違います。医院を選ぶ理由も、予約をためらう理由も違うはずです。
ターゲット設定で大切にしたいのは、その人がどんな場面で歯科医院を必要とするのかを考えることです。
年齢や性別を出発点にしながら、悩み、希望、不安、通院条件まで掘り下げる。その過程を省かないことが、発信内容を考えるうえで必要だと思います。
7. まずは、実際に来院している患者から考えてみる
患者像を考える際は、実際に寄せられた問い合わせや来院理由が手がかりになります。
例えば、次のようなことを振り返ってみてください。
- 何をきっかけに受診したのか
- どこで医院を知ったのか
- 予約前に何を質問されたのか
- 医院を選んだ理由として、どんな話があったのか
繰り返し聞かれる質問があれば、HPに説明を追加するテーマになるかもしれません。来院理由に共通点があれば、発信で取り上げる内容の候補になります。
ただし、今来ている患者さんだけで、これから来院してほしい患者像を決める必要はありません。現在の患者さんの声を手がかりにしながら、医院が今後届けたい診療内容も合わせて考えます。
「30代女性」という設定から、どのような悩みを持ち、何を知りたくて、どんな条件なら通える人なのかへ。
そこまで具体的にすることで、次に伝えるべき内容が見えてきます。



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