「ホームページが古くなってきたので、作り直しませんか」
「AIも進歩していますし、今のままでは取り残されてしまいますよ」
営業担当から提案を受けて、ホームページのリニューアルを考える先生もいると思います。提案をきっかけに、自院の情報発信を見直すこと自体は悪いことではありません。
ただ、契約や制作を進める前に、一度考えていただきたいことがあります。
何のために、ホームページを作り直すのでしょうか。
患者さんに診療内容を知ってもらいたいのか。特定の治療について相談を増やしたいのか。古い情報を更新し、予約しやすくしたいのか。
この目的が曖昧なままでは、デザインが新しくなっても、医院が伝えたいことは変わらないかもしれません。
今回は、歯科医院のホームページ制作や更新の打ち合わせに関わる中で、私が感じていることをお伝えします。
「業者に言われたから」の先に、目的はありますか?
私が先生方と打ち合わせをする中では、先生自身の具体的な要望よりも、営業からの提案がリニューアルのきっかけになっている場面を多く経験します。
「どんなホームページにしたいですか」
「どの治療について、もっと知ってもらいたいですか」
「医院で大切にしていることは何ですか」
こうした質問をしても、すぐには答えが出てこないことがあります。
日々の診療で忙しい先生に、最初からホームページの完成像を用意していただくのは難しいでしょう。制作に詳しくない以上、何を要望すればよいのか分からないのも自然だと思います。
ただ、制作方法を知らないことと、作り直す目的が決まっていないことは、分けて考える必要があります。
デザインやページの構成は、制作側から提案できます。しかし「この医院は何を伝えたいのか」「患者さんにどんなことを知ってほしいのか」は、医院側の考えを聞かなければ決められません。
営業の提案を受けたときこそ、今のホームページで困っていることを整理してみてください。具体的な問題が見つからないなら、全面リニューアルが必要なのかを考え直す余地があります。
ホームページを持つ目的によって、必要な内容は変わる
ホームページの役割は、医院によって違います。
例えば、特定の治療や医院の診療方針を詳しく伝えたいなら、治療の説明、医院の取り組み、症例など、患者さんが理解するための情報を充実させる必要があります。
一方、地域の患者さんに、診療時間や対応する治療、受診方法を分かりやすく案内することが主な目的なら、情報の正確さと探しやすさを優先したいところです。
もちろん、一つのホームページで複数の役割を持つこともできます。その場合も、何を優先するかを決めておくと、制作中の判断がしやすくなります。
| 主な目的 | 優先して整理したい情報 |
|---|---|
| 地域の患者さんに受診先として知ってもらう | 診療内容、場所、診療時間、初診の流れ、予約方法 |
| 特定の治療について相談してもらう | 対応できる悩み、治療の選択肢、費用、期間、相談方法 |
| 医院の考え方を伝える | 診療方針、説明やカウンセリングの進め方、院長・スタッフの紹介 |
| 通院中の患者さんに案内する | 休診情報、診療時間の変更、予約変更の方法、お知らせ |
大切なのは、情報をただ増やすことではありません。目的に合わせて、必要な情報を選び、患者さんが見つけられる形にすることです。
目的が決まっていないと、過去のサイトにある文章と写真を、新しいデザインに移すだけになりやすいと感じています。それでも見やすさが改善する価値はありますが、せっかく作り直すなら、伝える内容まで見直したいと思います。
制作会社に任せられることと、医院にしか分からないこと
制作会社は、ホームページを形にする専門家です。文章を整理したり、写真を配置したり、スマートフォンでも使いやすい構成を考えたりできます。
ただし、先生の診療への考え方や、医院の日常を、最初から理解しているわけではありません。
どんな治療を行っているのか。患者さんへの説明に、どれくらい時間を取っているのか。どんな相談が多いのか。診療で何を大切にしているのか。
こうした情報は、先生やスタッフの皆さんから共有していただく必要があります。
私は、先生に完成した文章を用意していただく必要はないと考えています。文章を整えることは制作側が手伝えます。ただ、その材料となる診療の事実や考え方までは、制作側だけで作れません。
役割を分けるなら、次のようになります。
- 医院側は、診療の事実と、伝えたいことを共有する。
- 制作側は、それを患者さんに分かる文章や構成に整理する。
- 医院側は、整理された内容が実態や考え方に合っているか確認する。
このやり取りがあって初めて、その医院に合うホームページに近づいていくと思います。
「医院の強み」を答えられなくても、具体的な話から整理できる
「大切にしていることは何ですか」と聞かれても、うまく言葉にできない先生もいます。
その場合、私は日々の診療について聞くようにしています。患者さんとどれくらいカウンセリングをしているのか。保険診療でどこまで対応しているのか。どんな順番で説明しているのか。
先生の話し方や患者さんへの接し方についての話も含めて、医院のイメージを少しずつつかみます。
そのうえで、
「今日お話ししていて、患者さんの話を聞く時間を大切にしている医院なのかなと感じたのですが、いかがでしょうか」
というように、自分が受け取った印象を先生に確認します。
私の経験では、こうした聞き方をすると「そうそう」と、先生の考えにつながることがあります。
ただ、それでも私がつかめるのは、打ち合わせを通じたイメージです。先生に確認し、実際に行っていることと結びつけなければ、一般的な紹介文で終わってしまいます。
例えば「丁寧な説明を大切にしています」と書くなら、何を、どのように説明しているのかまで確認したいところです。文章に具体性を持たせるためにも、先生の協力が必要になります。
「そのままでいい」という了承だけでは、認識が揃ったとは限らない
院長挨拶などは、特に先生自身の考えが必要な部分です。
制作側が打ち合わせをもとにたたき台を作り、先生に添削していただく。あるいは、先生に書いていただいた文章を、制作側が読みやすく整える。どちらの進め方もあります。
ただ、確認をお願いしても「そのままでいい」と言われることがあります。
その了承が、内容に納得したうえでのものなら問題ありません。しかし、忙しくて十分に読めていない、直し方が分からない、制作側に任せたいという意味の場合も考えられます。
了承をもらったことだけで、先生と制作側が同じ完成像を持っているとは限りません。
これは逆もあると思います。先生が熱量を持って作りたいと考えていても、制作側がその意図を十分に聞かず、決まった形に当てはめてしまうケースです。
だからこそ、私はホームページは二人三脚で作るものだと考えています。
「この文章は先生の考えに合っていますか」
「この治療を一番目立たせる構成でよいですか」
「実際の診療と違う表現はありませんか」
確認する内容を具体的にしながら、認識を合わせていく必要があります。
デザインの前に、診療情報を確認する
ホームページを見直すとき、私はデザインと同時に、掲載情報が現在の医院に合っているかを確認したいと思っています。
診療時間が違う。対応している治療が掲載されていない。写真が古く、現在の院内と違う。こうした状態なら、まず患者さんに必要な情報を整えることが先です。
見やすさについても、色や雰囲気だけで判断するものではありません。
- 文字が小さく、読みにくくないか。
- 写真がなく、院内や受診の様子を想像しにくくないか。
- 文字化けや表示崩れが起きていないか。
- スマートフォンで無理なく読めるか。
- 予約方法や連絡先を見つけられるか。
SSL・HTTPSの対応状況など、技術面も制作・管理会社に確認しておきたい項目です。
そのうえで、問題が一部の情報や写真に限られるなら、部分修正で対応できる可能性があります。サイト全体が使いにくく、現在の仕組みでは改善が難しいなら、作り直しを検討する理由になります。
古いから作り直す、という判断の前に、何が困るのか、どこまで直せば目的を満たせるのかを確認してください。
修正依頼は、別の担当者にも伝わる形にする
ホームページの修正では、先生が普段連絡している担当者が、そのまま作業するとは限りません。
私の関わる現場でも、窓口担当が先生からの依頼を受け、別の修正担当へ伝えることがあります。
先生、窓口担当、修正担当と人を挟むからこそ、依頼は明確にしていただきたいと思っています。
完成した文章まで用意する必要はありません。ただ、どのページの、どの場所に、何を追加・変更したいのかは分かるようにしていただけると、進めやすくなります。
例えば、次のような依頼です。
| 曖昧になりやすい依頼 | 伝わりやすい依頼の例 |
|---|---|
| 小児歯科をもっと目立たせたい | トップページの診療案内に、小児歯科への入口を追加したい |
| 写真を変えてほしい | 院内紹介ページの受付写真を、添付した現在の写真に差し替えてほしい |
| 診療時間を直してほしい | 診療時間表の土曜午後を「休診」に変更し、ほかの掲載箇所も確認してほしい |
| 文章を追加したい | 初診案内の予約方法の下に、当日受診の問い合わせ方法を追加したい |
ページのURLや、該当箇所を示したスクリーンショットがあると、場所の取り違えも減らしやすくなります。
修正回数に制限がある場合は、急ぐ訂正を窓口へ伝えたうえで、それ以外の変更を一覧にまとめて相談すると、対応範囲や日程を確認しやすくなります。
信頼できる担当者か、契約前から見ておく
目的を明確にしても、制作途中でやり取りが止まってしまえば、十分に形にできません。
だからこそ、私は担当者が本当に医院のことを考えているかを見てほしいと思っています。
説明が上手い、感じがよいという印象に加えて、次の行動を確認したいです。
- 医院の目的や困りごとを聞いてくれるか。
- 提案が必要な理由を説明してくれるか。
- 契約時に話した内容を、書面やメールで明確にしてくれるか。
- 連絡に返答し、対応状況や次の予定を伝えてくれるか。
- 契約後の窓口や、担当変更時の引き継ぎが決まっているか。
長期契約では、契約を取った担当者が最後まで同じ立場で関わるとは限りません。「最後まで責任を持ちます」という言葉だけでなく、担当者が変わっても約束した内容が引き継がれる体制を確認しておきたいところです。
また、返答が早いことと、作業がすぐに完了することは別です。時間がかかる場合も、理由と予定を共有してくれるか。その姿勢も判断材料になると思います。
目的を共有し、最後まで確認して完成させる
私が先生方に一番伝えたいのは、リニューアルの目的を明確にし、途中で諦めずに作り上げてほしいということです。
最初から立派な診療方針や、完成した文章を用意する必要はありません。
まずは、なぜ今のホームページを変えたいのか。何を知ってもらいたいのか。現在の内容で足りていないものは何か。それを制作側と共有してください。
制作が始まった後も、確認をすべて任せきりにせず、診療内容や先生自身の考えが正しく伝わっているかを見ていただきたいと思います。
公開後も、先生やスタッフの皆さんに、診療時間、治療内容、費用、写真、予約方法などを確認していただけると、医院の実態とのズレに気づきやすくなります。
ホームページを新しくすること自体を目的にせず、患者さんに何を届けるために作るのかを、最後まで共有する。
そして、その作業を一緒に進められる担当者と制作会社を選ぶ。
私は、それがリニューアルを意味のあるものにするための出発点だと考えています。



コメント