広告は、出せば患者が来るものではない

集患・マーケティング

日々、診療に向き合いながら、医院を経営されている先生方。

経営者である以上、「集患」について一度も悩んだことがない先生は、ほとんどいないのではないでしょうか。

新患を増やしたい。
自費診療をもっと知ってもらいたい。
最近、患者数が少し落ちてきた。
近隣に新しい歯科医院ができた。

そんなとき、真っ先に候補に挙がるのが「広告」です。

SEO、MEO、ホームページ、ブログ、チラシ、SNS広告、Instagram運用、ポータルサイト、動画広告……。

今の時代、歯科医院が選べる集患施策は数え切れないほどあります。

そして、それぞれの会社が言います。

「これからはMEOです」

「Instagramをやった方がいいです」

「ホームページをリニューアルしましょう」

「この広告なら新患を増やせます」

では、先生に一つ質問があります。

本当に“良い広告”とは、何でしょうか。

そして今、先生の医院が行っている広告は、本当に必要なものでしょうか。

今回は、広告のテクニックではなく、もう少し手前にある「そもそも広告とは何なのか」について考えてみたいと思います。


広告は「患者を連れてくるもの」ではない

これは最初に伝えておきたいことです。

広告を出したからといって、患者さんが来るわけではありません。

当たり前のように聞こえるかもしれません。

でも、広告の現場にいると、

広告を出す
↓
認知される
↓
患者さんが増える

という一本道で考えてしまうケースを何度も目にします。

実際の患者さんの行動は、そんなに単純ではありません。

少し患者さん側の立場になって考えてみましょう。


自分が歯医者を探すとしたら、何を見るでしょうか

例えば、引っ越したばかりの街で突然歯が痛くなったとします。

近所にかかりつけの歯科医院はありません。

そこでスマートフォンを開いて、

「〇〇駅 歯医者」

「〇〇市 歯医者」

と検索する。

いくつかの歯科医院が表示されます。

では、その瞬間に一番上に表示された医院へ予約するでしょうか。

おそらく、多くの人はもう少し見ます。

「家から近いかな?」

「駅から何分だろう?」

「仕事帰りでも間に合うかな?」

「院内は清潔そうかな?」

「先生はどんな人だろう?」

「スタッフさんの雰囲気は?」

「口コミはどうだろう?」

ホームページを開く人もいれば、Googleマップを見る人もいる。

Instagramを見る人もいるかもしれません。

そして、いくつかの医院を見比べながら、

「なんとなく、ここ良さそうだな」

と思った医院を選ぶ。

私は、この「なんとなく良さそう」が非常に重要だと思っています。


人はいつも「一番良いもの」を選んでいるわけではない

何かを選ぶとき、

「絶対にここがいい!」

と最初から強く思って決めることばかりではありません。

むしろ、

「家から近いし」

「先生も優しそうだし」

「ホームページの感じも悪くないし」

「口コミもそこそこ良さそうだし」

「じゃあ、ここにしてみようかな」

そんな小さな判断の積み重ねで決めることの方が多い。

つまり、患者さんが選んでいるのは、単純に

「広告を見た医院」

ではありません。

広告をきっかけに医院を知り、その後いろいろな情報に触れ、

「ここなら大丈夫そう」

と思えた医院を選んでいるのです。

ここを理解すると、広告の見え方が少し変わります。


広告は、あくまで「きっかけ」の一つ

私は広告を、

「まだ医院を知らない人と、医院が出会うきっかけ」

だと考えています。

Google広告を見た。

Instagramで流れてきた。

Googleマップで見つけた。

チラシがポストに入っていた。

検索結果に記事が出てきた。

どれも医院を知るきっかけにはなります。

でも、広告だけで患者さんの意思決定が完結するわけではありません。

広告を見た後にホームページを開いたら、何年も更新されていない。

掲載されている写真が暗い。

どんな先生なのか分からない。

Googleマップを見ると医院情報が不十分。

口コミへの返信もない。

料金について知りたいのに、どこにも書いていない。

これでは、せっかく広告で医院を知ってもらっても、その先で離脱してしまいます。

だからこそ、

「どうやって知ってもらうか」だけではなく、「知ってもらった後に、どう感じてもらうか」まで考える。

ここまでがマーケティングだと思っています。


広告より先に、医院としての「軸」をつくる

そこで重要になるのが、医院としてのブランディングです。

「ブランディング」と言うと、

ロゴを作る。
ホームページをおしゃれにする。
医院のカラーを統一する。

そんなイメージを持つかもしれません。

でも、本質はそこではありません。

「自分たちは、どんな歯科医院なのか」

を明確にすること。

誰に来てほしいのか。

何を大切にしているのか。

どんな治療を提供したいのか。

患者さんにどんな医院だと思ってほしいのか。

そこが定まって初めて、

ホームページも、

Instagramも、

広告も、

院内での患者対応も、

一つの方向を向き始めます。

逆に、この軸がないまま広告だけ増やしていくと、

「広告を出せば患者さんが増える」

という発想に陥りやすくなります。

そして結果が出なければ、

「じゃあ次はMEO」

「今度はInstagram」

「次は動画広告」

と、新しい施策を探し続けることになる。

大切なのは、広告の種類を増やすことではありません。

自分の医院に、本当に必要なものを選べること。

経営者である先生にとって、この判断力の方がずっと重要だと思っています。


そして、広告より強いものがある

ここまで広告について書いてきました。

でも私は、医院を知ってもらう「きっかけ」の中で、広告よりも強いものがあると思っています。

それが、

人から人への紹介です。

「うちの母が通ってるんだけど、先生優しいよ」

「子ども連れて行ったけど、すごく丁寧だったよ」

「インプラントなら、あそこに一度相談してみたら?」

家族。

友人。

職場の同僚。

自分が信頼している人から聞いた一言。

広告会社が何万円、何十万円かけて作った広告よりも、たった一言の方が人を動かすことがあります。

考えてみれば当然です。

一度も行ったことのない場所を選ぶとき、

インターネット上にいる知らない100人の評価より、

自分が信頼している一人の「あそこ良かったよ」の方が、安心できることがある。

だから私は、集患に悩んでいる先生にこそ伝えたいことがあります。


新しい患者さんを探す前に、今いる患者さんを大切にする

集患に悩むと、どうしても外へ目が向きます。

「どうすれば新患が増えるか」

「どの広告を出すべきか」

「SNSを始めるべきか」

もちろん、それも大切です。

でも、その前に一度考えてみてほしい。

今、医院に来てくれている患者さんは満足しているでしょうか。

受付で気持ちよく迎えられているか。

待ち時間への配慮はできているか。

治療内容をきちんと理解して帰ってもらえているか。

不安を聞けているか。

「またここに来たい」と思ってもらえているか。

そして、

「大切な家族にも、この医院を紹介したい」

と思ってもらえているでしょうか。

新しい患者さんを一人連れてくることだけが集患ではありません。

今いる患者さんに満足してもらい、

また来てもらい、

その人の大切な人にも選んでもらう。

私は、それも立派な集患だと思っています。


広告会社で働いている私が、広告を勧めない理由

少し矛盾して聞こえるかもしれません。

私は広告の仕事をしています。

広告を提案し、作り、運用する側にいます。

そんな私が、

「広告を出すことが、必ずしも一番良い選択ではない」

と言っています。

でも、本当にそう思っています。

医院によって課題は違います。

認知が足りない医院もあれば、ホームページに問題がある医院もある。

予約導線に問題があるかもしれない。

患者対応に改善点があるかもしれない。

そもそも広告を出す必要がない医院だってあります。

だから、

「集患したい=広告を出す」

ではなく、

「なぜ患者さんが増えないのか」

から考えてほしい。

その原因が広告で解決できるなら、広告を使えばいい。

そうでなければ、別のところから直した方がいい。

広告は目的ではありません。

あくまで、医院をより良い状態にするための手段の一つです。


本当に強い医院は、広告を止めても選ばれる

広告を否定したいわけではありません。

広告には大きな力があります。

必要としている人に医院を知ってもらえる。

新しい治療を伝えられる。

開業したばかりの医院を認知してもらえる。

正しく使えば、非常に有効な手段です。

でも、広告だけに患者さんを連れてきてもらう医院にはしたくない。

私が考える理想は、

広告がなくても患者さんから選ばれる医院に、広告を掛け合わせること。

今いる患者さんが満足している。

紹介が生まれる。

医院としての軸がある。

ホームページを見ても、その魅力が伝わる。

先生やスタッフの考え方も伝わる。

そこに広告を加える。

そうすれば広告は、

ゼロから患者さんを作るものではなく、すでにある医院の魅力を、まだ知らない人へ届けるもの

になります。

広告の種類を選ぶ前に。

広告費を増やす前に。

一度だけ考えてみてください。

「広告がなくても、患者さんから選ばれる医院になっているだろうか。」

そのうえで必要なら、広告を使えばいい。

私は、それが広告との一番健全な付き合い方だと思っています。

広告を出すことと、集患することは同じではありません。

この違いを理解することが、広告を考える最初の一歩です。

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