「先生の医院の強みは何ですか?」
そう聞かれたら、先生は何と答えるでしょうか。
「最新の設備を導入していること」
「丁寧なカウンセリング」
「痛みに配慮した治療」
「幅広い診療に対応していること」
「患者さんに寄り添った診療」
どれも、とても大切なことです。
でも、少しだけ厳しい言い方をすると、
それだけでは、患者さんが先生の医院を選ぶ理由にはならないかもしれません。
なぜなら、同じことを伝えている歯科医院が、先生の医院の周りにもたくさんあるからです。
では、どうすればいいのか。
「他の医院にはない、特別な何か」を無理やり探す必要はありません。
むしろ私は、強みを探そうとすること自体が、強みを分からなくしていることがあると思っています。
今回は、そんな歯科医院の「強み」について考えてみます。
「当院が選ばれる7つの理由」を、患者さんはどう見ているのか
歯科医院のホームページを見ていると、
「当院が選ばれる7つの理由」
「当院の10の特徴」
といったページをよく見かけます。
CT完備。
徹底した衛生管理。
丁寧なカウンセリング。
駅から徒歩3分。
土曜日も診療。
個室診療室。
経験豊富な歯科医師。
もちろん、どれも患者さんに伝えるべき情報です。
ただ、一度患者さんの立場になって考えてみてください。
近所にある3つの歯科医院のホームページを開いて、
A医院にも「丁寧なカウンセリング」。
B医院にも「痛みに配慮した治療」。
C医院にも「患者様に寄り添った診療」。
と書いてあったら、どうでしょうか。
結局、どこがいいのか分からない。
これが起こります。
情報が足りないのではありません。
むしろ、たくさん伝えようとしている。
それなのに違いが分からない。
なぜなら、
「良いこと」を並べることと、「選ぶ理由」をつくることは違うからです。
患者さんは「最新設備」が欲しいわけではない
例えば、先生が新しい設備を導入したとします。
決して安い買い物ではありません。
診断の精度を高めたい。
より良い治療を提供したい。
患者さんの負担を少しでも減らしたい。
いろいろなことを考えて、導入を決めたはずです。
当然、医院としては伝えたいですよね。
そこでホームページに、
「最新の〇〇を導入しています」
と掲載する。
でも、ここで一つ考えてみてください。
その設備の名前を見た患者さんは、
それが何なのか、本当に分かっているでしょうか。
先生にとっては、
「この設備があることのすごさ」
が分かる。
でも患者さんが知りたいのは、設備そのものではありません。
「それがあると、私にとって何がいいの?」
ということです。
より詳しく状態を確認できる。
治療の選択肢を検討しやすくなる。
身体への負担に配慮した治療につながる。
今まで分かりにくかった部分まで確認できる。
ここまで伝わって、ようやく患者さんにとって意味のある情報になります。
つまり、
医院が伝えたい「特徴」を、患者さんにとっての「価値」に変換しなければいけない。
設備を紹介することが悪いのではありません。
設備を紹介して、そこで話が終わってしまうことがもったいないのです。
「丁寧なカウンセリング」も、実はかなり曖昧です
もう一つ、よく見る言葉があります。
「丁寧なカウンセリングを大切にしています」
これも決して悪い言葉ではありません。
むしろ、本当に大切なことです。
でも患者さんからすると、
「丁寧って、具体的にどういうこと?」
という疑問が残ります。
30分しっかり時間を取って話を聞いてくれるのか。
複数の治療方法を説明してくれるのか。
費用を治療前に説明してくれるのか。
写真や資料を見ながら説明してくれるのか。
歯科医師には直接言いにくいことを、スタッフに相談できるのか。
同じ「丁寧なカウンセリング」でも、実際にやっていることは医院によって違うはずです。
ところが、その違いを全部なくして、
「患者様に寄り添った丁寧なカウンセリング」
という一言にまとめてしまう。
これでは、本当に丁寧にやっている医院ほど、もったいない。
本当はすごく良い医院なのに、伝え方で「普通の医院」になってしまう
これは広告やホームページの現場でも、よく感じることです。
先生に話を聞いていると、
「それ、すごくいいですね」
と思う話が出てくることがあります。
例えば、
「子どもが怖がっていたら、初日は無理に治療しないこともあります」
「患者さんが納得していない状態では、治療を進めないようにしています」
「治療方法は一つだけではなく、できる限り選択肢を説明しています」
「以前こういう患者さんがいて、それをきっかけにこの設備を導入しました」
こういう話です。
先生からすれば、普段からやっていることなので、
「そんなこと、普通ですよ」
と思うかもしれません。
でも、その「普通」が患者さんにとっては安心材料になることがあります。
ところが、いざホームページを見ると、
「患者様に寄り添った治療を大切にしています」
の一文だけになっている。
せっかくそこに医院らしさがあるのに、一般的な言葉に置き換えた瞬間、見えなくなってしまう。
私はこれが、
「強みがあるのに、強みが伝わらない」
大きな理由の一つだと思っています。
そもそも、強みは「他院にないもの」でなくてもいい
強みについて考え始めると、
「他の医院がやっていないことは何だろう?」
と考えてしまいがちです。
でも、本当にそうでしょうか。
今の時代、
CTを導入している医院は他にもあります。
カウンセリングを重視している医院もあります。
痛みに配慮している医院もあります。
キッズスペースのある医院もあります。
土曜日に診療している医院もあります。
完全に「自院だけ」のものを探し続けたら、なかなか見つからないと思います。
だから私は、
「何をやっているか」だけで差をつけようとしなくてもいい
と思っています。
代わりに考えてほしいのが、
「なぜ、それをやっているのか」
です。
「何をしているか」より「なぜしているのか」を伝える
例えば、
「当院ではカウンセリングを大切にしています」
だけなら、よくある言葉です。
では、
「以前、治療内容を十分に理解できないまま治療を受け、不安を抱えて当院へ来られた患者さんがいました。その経験から、当院では治療を始める前の説明に時間を取ることを大切にしています」
だったらどうでしょう。
同じ「カウンセリングを大切にしている」という話です。
でも、伝わり方はかなり変わります。
そこに、
医院の考え方が見えるからです。
設備も同じです。
何を導入しているのか。
だけではなく、
なぜ導入したのか。
何を解決したかったのか。
その結果、患者さんにどんな価値を提供できるようになったのか。
そこまで伝える。
すると単なる「設備紹介」ではなくなります。
先生が診療で何を大切にしているのかを伝える話になる。
私は、そこにその医院らしさが出ると思っています。
患者さんは「医院の強み」を探しているわけではありません
ここは、とても大切です。
患者さんが歯科医院を探しているとき、
「この医院の競合優位性は何だろう?」
なんて考えているわけではありません。
もっと身近なことを考えています。
「痛いのかな」
「怖い先生だったら嫌だな」
「ちゃんと説明してもらえるかな」
「高い治療を無理に勧められないかな」
「子どもが泣いても大丈夫かな」
「仕事をしながら通えるかな」
つまり患者さんが知りたいのは、
「この医院は、私の不安や悩みを分かってくれそうか」
ということです。
ここに、医院側との大きなズレがあります。
医院側は、
「私たちは何がすごいのか」
を伝えようとする。
患者さんは、
「私にとって何がいいのか」
を知りたい。
この二つは、似ているようで違います。
だから、医院の強みをそのまま伝えるのではなく、
患者さんにとってどんな意味があるのかまで“翻訳する”必要があります。
同じことでも、患者さんの言葉に変えると見え方が変わる
例えば、
「駅から徒歩3分」
これは医院の特徴です。
でも患者さんからすると、
「仕事帰りでも通いやすそう」
かもしれない。
「土曜日も診療」
なら、
「平日に仕事を休まなくても通えそう」
「個室診療室」
なら、
「周りの人を気にせず相談できそう」
「カウンセリングを重視」
なら、
「よく分からないまま治療を進められることはなさそう」
「CTを導入」
なら、
「きちんと状態を調べてから治療方法を考えてくれそう」
同じ事実です。
何も新しく作っていません。
ただ、
「医院から見た特徴」から「患者さんが感じる価値」へ視点を変えただけです。
でも、この一つの変換だけで伝わり方は大きく変わります。
「うちには強みがない」と思ったら、患者さんを見てみてください
先生の中には、
「うちには、そんな特別な強みはないよ」
と思う方もいるかもしれません。
そんなとき、私は無理に強みを作らなくてもいいと思っています。
代わりに、
今、医院に通ってくれている患者さんを見てみてください。
なぜ、その患者さんは先生の医院を選んだのでしょうか。
なぜ、何年も通ってくれているのでしょうか。
なぜ、自分の子どもや家族まで連れてきてくれたのでしょうか。
患者さんから、よく言われる言葉はありませんか。
Googleの口コミには、何と書かれていますか。
先生自身が強みだと思っていないことを、患者さんが高く評価していることがあります。
「説明が分かりやすかった」
「受付の方が優しかった」
「子どもが初めて歯医者を怖がらなかった」
「無理に治療を勧められなかった」
「先生がちゃんと話を聞いてくれた」
先生にとっては、
「それくらい普通のこと」
かもしれません。
でも患者さんにとっては、
「だから、この医院に通っている」
なのかもしれません。
その違いは、とても大きいと思います。
強みは、会議室で作るものではない
ホームページを作る。
広告を出す。
そんなときに、
「医院の強みを3つ決めましょう」
となることがあります。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
ただ、
「何か強みを考えなきゃ」
と机の上だけで考えると、
「最新設備」
「丁寧な説明」
「痛みに配慮」
といった、どこかで見た言葉になりやすい。
そうではなく、
なぜこの医院をつくったのか。
どんな患者さんを助けたいのか。
診療で絶対に妥協したくないことは何か。
スタッフにいつも伝えていることは何か。
患者さんから何と言われたとき、一番嬉しかったのか。
なぜ、その設備にお金をかけたのか。
なぜ、その治療方法を選んでいるのか。
そういうことを一つずつ掘ってみてください。
その中から、
「あ、この医院ってこういう医院なんだ」
というものが見えてくる。
それが、DENTRAILで考える「強み」です。
強みは「言うもの」ではなく「感じてもらうもの」
「患者様第一の歯科医院です」
と書けば、患者様第一になるわけではありません。
「丁寧な説明を心がけています」
と書けば、丁寧さが伝わるわけでもありません。
「子どもに優しい歯科医院です」
と書くだけでは、本当に優しいのか患者さんには分かりません。
それなら、
実際にどんな説明をしているのか。
怖がっている子どもにどう接しているのか。
患者さんが迷っているときにどう向き合っているのか。
それを見せた方がいい。
「私たちは優しいです」と言うより、優しさが伝わる場面を見せる。
「説明を大切にしています」と言うより、実際の説明へのこだわりを伝える。
強みとは、
医院側が宣言するものではなく、患者さんの中に残る印象なのかもしれません。
本当の強みは、すでに医院の中にあるかもしれない
歯科医院の強みを考えるとき、
「他院と違うものを作らなければ」
と焦る必要はありません。
まずは、
「自分たちは、患者さんのために何を大切にしているのか」
を考えてみてください。
そして次に、
「それは患者さんにとって、どんな価値になるのか」
まで考えてみる。
最新設備がある。
駅から近い。
土曜日も診療している。
カウンセリングに時間をかけている。
それだけなら、まだ医院側から見た「特徴」です。
そこからもう一歩進んで、
「だから、患者さんにとって何がいいのか」
まで伝える。
そこで初めて、
「医院の特徴」が、
「患者さんが選ぶ理由」
に変わっていくのだと思います。
もし今、
「うちの医院には、これといった強みがない」
と思っているなら。
新しい何かを探す前に、一度だけ今いる患者さんを見てみてください。
長く通ってくれている患者さん。
家族を紹介してくれた患者さん。
わざわざ口コミを書いてくれた患者さん。
そして、考えてみてください。
なぜその人たちは、数ある歯科医院の中から、先生の医院を選び続けているのでしょうか。
もしかすると、その答えこそが、
先生自身もまだ気づいていない、
その医院の本当の「強み」なのかもしれません。



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